2013年11月26日火曜日

幻の 「 津軽そば 」


青森県の津軽地方にはB級ぐるめでもあり、私にとってはソウルフードの「津軽そば」がある

出来上がるまでに3日の時間と手間が掛かる為、終戦後は殆ど作られることも減り

自然消滅状態に・・・   その為「幻の津軽そば」と言われるようになった

15年前に地元弘前市の有志が集まり「津軽そば研究会」が結成され、試行錯誤の結果

昔からの「津軽そば」作りに成功し、今では市内の限られた店で食べられるようになった





そもそも「津軽そば」をご存じない方のほうが多いのではないだろうか ?

旨いそばの条件の「三たて」を根底から覆す製法で作られるのが「津軽そば」だ

通常そばの「三たて」とは(曳き立て)・(打ちたて)・(茹でたて)の事を指す

それにより喉越しもよくコシもあり旨いと言われるそばに・・・

「津軽そば」は麺は柔らかくコシも無く、ぷつぷつと切れやすくそばといいづらい物で

マニアやそば好きの方でも味や食感はともかく製法まで知ってる方は少ない





江戸時代の津軽藩(地方)ではこめの収穫量が少なく年貢に使われる為、

日常的にそばを食べる事が多かった   そのそばのつなぎとして大豆を使う事で

「津軽そば」が誕生した

製法の一つとして、1~2日程水に浸した大豆をすりつぶし、そば粉と混ぜ合わせ

一昼夜寝かせ発酵させる   別にそばがきを作り同様に一昼夜置く

それぞれを混ぜ合わせ固めにこねる   捏ね上げたら麺棒で延ばし、切ってから

更に数時間~一昼夜(季節による)寝かせる

長く寝かせるほどコシが強く色も濃くなる

その後一食分ずつ茹でてから、数時間以上冷やし(茹で置き)て完成となる

食す場合は一度茹で置きしてる為、熱湯に10~20秒程入れて丼に移し具を載せ

だし汁を注ぐだけのチョイの間=短時間でOKだ !

食感は通常のそばとは似て非なるもの   コシは殆ど無く、モチモチ感は当然無い

柔らかく、箸でつまむとプツプツ切れる

その為「津軽そば」好きの老人に「箸でそばを手前に寄せて汁と一緒に飲み込むように

して食べるんだよ!  そのかわり、汁も昆布と焼き干しや煮干しの出汁がしっかりと

利いた物でなければ・・・」と食べ方のウンチクを聞いたことがある


つなぎが大豆の為か自然な甘味があるし大豆からの蛋白質もとれる

そば全体が柔らかくて優しい趣のもの・・  お年寄りや幼児には最適





津軽地方の中心地弘前市周辺で実際に常時「津軽そば」を提供してる店の一部は

市内和徳町の「三忠食堂-本店」で焼き干し出汁を使用、五十石町の会席郷土料理店

「野の庵」、製麺所の直売もかねた駅前町-虹のマートにある「めんの店-アキモト」、

JR弘前駅西口の「そば処 こぎん」、東北道下り「津軽サービスエリア-スナックコーナー」


他市内でも取扱店が増えたが季節限定、数量限定の店が多い

青森市内のラーメン店「長尾中華そば」でも「津軽そば」の取り扱いがある

また東京新宿区の牛込神楽坂駅近くの手打ちそば「芳とも庵」でも自家製手打ちの

「津軽そば」を提供してる数少ない店 時間があったら是非とも寄ってみたいものだ



以前より大豆ではなく小麦を使用し、同じ製法で作られる事も多い

喉越しや食感はまるっきり同じだ

知る限り「津軽そば」と同様に思える製麺所が弘前市馬屋町の「アキモト製麺(明治21年

創業)」と五所川原市にある梵珠(ぼんじゅ)そばで有名な「竹鼻製麺所(明治11年創業)」

の二社ー幸いにして何度も食した事があり、どちらも「津軽そば」と言ってもよい出来だ!


今時珍しい位手間暇が係り採算の取り辛い製法をかたくなに固執し続ける職人的製麺所

と「津軽そば」にエールを !・・・





2013年11月16日土曜日

出汁の極み 「イワシの焼き干し」 


日本の和風出汁として鰹節、昆布、煮干し他があげられる

その中で煮干しの変種として位置づけられるのが「焼き干し」です

煮干しは大釜で茹で魚を煮出すことによって脂分を落とす方法だが、煮出す事によって

残念なことに旨み成分も一緒に抜けてしまう

「焼き干し」は炭火でじっくり焼き、火を通す事によって脂分を落とし独特の濃厚で

深みのある物に・・  その為煮干しの3~5倍の濃厚な出汁が取れると言われてる


最近マスコミに取り上げられたせいもあり和食料理家以外の人にも脚光を浴びるようになった



青森の「焼き干し」つくりの産地は陸奥湾の平館海峡をはさんで下北半島の脇野沢

(むつ市)と対岸津軽半島の平館(外ヶ浜町)があげられる

「焼き干し」に使われる小魚として九州のアゴも有名だが青森の場合は「カタクチイワシ」

「マイワシ」「ウルメイワシ」「小アジ」を使用する   特に「カタクチイワシ」はアミノ酸の

含有量が多く価格も別格となるらしい

例年5月ころよりイワシが獲れ始めるが8月までのイワシは中・大型で脂が載り過ぎ

「焼き干し」には不向きだ   

8月のお盆頃から脂分の少ない小型の物が獲れ始め「焼き干し」作りが

本稼動し2月過ぎまで続く



大正初期より始められたイワシの定置網漁で収穫されたイワシを水揚げ後新鮮なうちに

殆ど手作業で3日~1週間かけて商品化する


その行程は 1 : イワシの頭と腹わたを取り水洗いをする
   
         2 : 折り板に並べて軽く乾燥させる

         3 : 竹串に刺して折り板に並べる

         4 : 船小屋(番屋)の中の長炉に串を並べ焼く

         5 : 焦がさない様に両面を均等に焼く

         6 : 熱い内に串を抜き折り板に並べ天日干しにする

         7 : 1日に2回表裏を返し、3~7日干して完成


近年作り手の減少や高齢化、そして「カタクチイワシ」等の減少によりイワシの「焼き干し」

価格が値上がり傾向です

ちなみに青森市のアウガ地下の公営常設市場での価格は「煮干し」-100g=¥150~

「焼き干し」¥900~¥1200(鰯の大小・種類により)・「アジの焼き干し」¥450

(H24年5月時点)


そのせいもあってか「イワシの頭付き焼き干し」「小アジの焼き干し」が廉価な為もあり

生産が増加してるようだ   使用するときに頭と腹わたを千切る手間が必要だが

品質そのものは同じ物だ

「小アジの焼き干し」「イワシの焼き干し」比べ出汁の度合いが薄く柔らかい味の為

弱冠多目に入れて出汁取りが必要



地元青森では一般家庭以外に津軽ラーメン(青森ラーメン)や津軽そば、帆立の貝焼きや

煮物、お吸い物や味噌汁等にイワシの「焼き干し」を使用する店がまだまだあります


また、高級和食料理店の料理長の隠し味にも使われてると聞いた事もあります

機会がありましたら是非イワシの「焼き干し」やその滋味溢れる懐かしくも優しい

出汁を使った料理をお試し下さい   

きっと貴方も感激するはずです